毎日思う

 どうやら私は、人とは違うらしい。

辛いこと、楽しいことを人並みに表現出来ない。

楽しいことはあるはずなのに、生きているのが辛い。

逃げたいのに、どこに逃げればいいのか分からない。

皆の優しさが辛いんだ。

なんで、こんな私に優しくするの?

いっそのこと見放してほしい。

過去に戻れればいいのに。

そうすれば失敗なんてしない。

もっと楽しく生きたのに。

きっといつか。

いつかきっと。

そう思いながら日々を過ごしてきた。

なんにも変わらない。

だって私が変わってないから。

変われればいいのに。

戻れればいいのに。

無邪気だったあの頃に。


そういう事を思いながら毎日を過ごしてる。


センチュリア物語

センチュリアという吹奏楽曲を聞きながら考えた話です。



私が所属する吹奏楽団が、創立百周年を迎えた。今日は百周年を祝うパーティーが行われる。

  会場に足を踏み入れると、丁度パーティーが始まる鐘が鳴り響いた。

   会場は百周年を祝う人で溢れている。普段一緒に演奏をしている仲間と共に、百周年を迎えた喜びを分かち合う。沢山の人と語り、お酒の力もあって段々と気分が高まるのを感じていた。尽きることの無い話題。絶えることの無い会話。

  そんな中で、いつも指揮を振っている先生に声をかけられた。

  何を言われるのか緊張していると、彼は低く心地のいい声で私について語った。私の音色、私の吹き方、私の良い所、私の悪い所。一人一人の音を聞き、奏者と向き合っているからこそ言えることだった。感動と興奮を抑えられない私に彼は言った「確かに百周年は節目ではあるが、それは序章に過ぎない。盛り上がるのはここからだ。そして、盛り上げるのは君たちだ」よく意味が分かっていない私を見て、彼は微笑み、去っていった。頭の片隅に彼の言葉を置きながら、私はまた仲間との会話に花を咲かした。

   突然マイクの入った音がした。賑やかだった会場は端から端にまるで誰かが合図を出したかのように静まった。

  静かになった会場に響くのは私の吹奏楽団の代表の言葉。『紳士』という言葉がピタリと当てはまる代表の声はとても静かでそれでも芯を持っていた。

  「本日は我が吹奏楽団の百周年記念パーティーにお越しくださりありがとうございます。

  さて、百周年ということについて少々語らせていただきます」

代表は微笑み語り出した。

  「百年という途方もない年月の中で何度代が変わったでしょう。偉大なる先人達のおかげで私達はこうして喜びを感じられているのです。昨日その喜びについてこの楽団の指揮者である友人に語った時彼は言いました。『まだ私達は序章に過ぎない』と。たしかにその通りなのです。たとえ、私が百年という節目に立っていても私の後ろには頼もしい若い世代がいるのです。自分達が輝く時を待っている、あるいはすでに輝いているのです」

  代表の言葉は段々と強くなっていった。それは代表の想いの強さを表していた。

  「若者たちが輝ける舞台を、音楽を最大限楽しむ術を、私達は繋いでいくのです。百周年は楽団にとってただの通過点なのですから。

  それでは、百周年を迎えられた事への感謝と後の世代への激励をもって、祝の詞とさせていただきます。引き続きパーティーをお楽しみください」


  彼がお辞儀をすると、拍手が起きた。

  

  百周年、通過点、代表の言葉を思い浮かべながら私は友達とパーティーを楽しんだ。

  昔教わった講師の先生にも会い、音が良くなったと褒められた。いつも怒られてばかりだったので、少し照れくさかった。

  パーティーも終わりに近づいてきた。会場も始めの賑やかさは薄まり、皆が百周年の余韻に浸っている。

  すると、指揮者の先生が私に向かって手招きしているのが見えた。私がそちらへ行くと彼は窓を指さした。その瞬間、大きな音がして空に大きな花が咲いた。百周年の記念に相応しい大きな花火が上がった。どうやらサプライズだったようだ。次々に上がる花火に皆口々に驚きの声を発する。

  先生は花火を眺めながら私に言った。

  「楽団の時代は始まったばかりだ。私の代はフィナーレまでもう少し。君達の代はまだ序章だ。君達がどんな演奏を見せてくれるのか楽しみにしている」

先生はそう言って去っていった。


まだ上がっている花火を見ながら、私は思う。


  たとえ私の代がフィナーレを迎えてもこの楽団はまだ終わらない。そうやって次へ繋いでいくんだ。今はただ全力で目の前の事をやろう。私達はまだ序章。これからが本当に輝く時なのだから。